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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

「ラウンジウェア」という<br/>未開の地に挑む
Interview vol.63

「ラウンジウェア」という
未開の地に挑む

有限会社PLEASURE 別所知可子さん

http://www.490tp.com/pleasure/

1996年同志社大学商学部を卒業後、モリリン株式会社入社。ニットマテリアル2課企画営業職。2000年に入社した三井物産株式会社では関西繊維部、米・伊向け海外貿易営業職を経験。東京モード学園、バンタンデザイン研究所などテキスタイル講師業を経て、2005年有限会社PLEASURE設立。

「ラウンジウェア」という未開の地に挑む別所さん

「ラウンジウェア」は、パジャマとは違う、ちょっとセクシーで上質な部屋着のことだ。ローブなどをイメージすると分かりやすいかもしれない。現在では見かける機会の増えてきたラウンジウェアも、8年前にはまだまだ異文化。その中で、自らの素材への知識を武器に、おしゃれで上質、値段も手頃な日本製のラウンジウェアのブランド「SECRET PLEASURE」を立ち上げた別所さんに、立ち上げの経緯や苦労から、自ブランドの商品へのこだわり、そして今後の展望などについてお話を伺った。

ラウンジウェアの文化を日本に

別所さんとラウンジウェアの出会いはおよそ15年前。パリで、バスローブやラウンジウェアの充実した売り場に衝撃を受けた。ガーデニングや高級家具など家の中にお金をかける世の中の流れから、日本にも上質、手頃なラウンジウェアがあればと考えたのが始まりだ。
元々日本にはなかったものだけに、最初は苦労の連続。デザインやパターンを工場に持っていっても「ババシャツ?」「そんなに胸元を開けたら売れない」と、世界観を理解してもらえない。何度も話し合い、思いを伝える必要があった。その後もサンプルを自分で着て、改良を重ね、半年かかってやっと完成。
しかし、今度は商品を売ってくれる所が見つからない。手探りであちこち回って半年。インポートの商品を扱うセレクトショップでは好感触であることがわかり、「インポートの香りがする国産で手頃な商品を探してた」と置いてもらえることになった。
7年目となる現在では、取り扱い店舗は50店ほど。3品から始まった商品は、40品まで増えた。「やりたいことはたくさんある。けど、自分が好きなだけじゃなく、お客さんにもいいと思ってもらえるものを作り続けないと。」と別所さん。定番商品は残したり、うまく在庫のバランスをとりながら、少しづつラインナップを増やしている。


”生地オタク”ゆえのこだわり

SECRET PLEASUREのラウンジウェア、最大の特徴はとにかく肌触りが良いことだ。抜群の着心地に魅了され、「お部屋着はこれしか着られない」というリピーターも多い。こだわりの元には、何百枚もの生地に囲まれた経験があった。
自らを「生地オタクなんです」と笑う別所さんは、前職の繊維専門商社の企画営業時代、1日に何百枚もの生地に触れ、厚みや手触り、何の用途で使えるか、どのブランドが気に入りそうか、などニーズに合わせた素材を選定、プレゼンする日々を送った。現在のラウンジウェアのメイン素材となる「綿モダールベアストレッチ天竺」も、当時自らが企画したもの。「会社員時代、同じ素材をベースに作った製品を2・3年間着ても毛玉になりにくくボロボロ感もあまり見られず、これは使える、と思った」と厳選した素材だ。
プロだからこそ、妥協点が難しいほどにこだわる。商品を作る際には早くて2ヶ月、長ければ半年以上の時間をかけて何度も試作と改良を重ねた上でお店に出しているという。「全商品、洗濯機での洗濯が可能」というお手入れの手軽さもうれしい。レースがついている服等の多くは手洗い必須だが、「私自身、手洗いが面倒で(笑)」というユーザー視点から実現したこだわりだ。「うちが目指しているところは、着て洗濯して、干して、あれあの服着たいのになんで洗えてないの?という感覚。それくらい、生活の中に入れてもらえるものにしたいです。」


ブランドイメージは「長く着てもらえるデザイン」から生まれる

社長とデザイナーを兼任する別所さん。「そりゃすごく儲かったら雇いますけど」と笑う。「でも、女性が起業するにはむしろいいかもしれませんね。」全ての情報の流れが自分で見える状況は、「わからないこと」を作り出さない。繊細さを持った女性には、向いているスタイルなのかもしれない。
「流行も大事だけど、お部屋着は外で見せびらかすというものではない。だから、シンプルってわけじゃないけど、長く着てもらえるように」というデザイン。一般的にアパレル業界は流行やヒット商品を追随する形が多いというが、別所さんのようなオリジナルのデザイナーは「こういう風に着て欲しい」というイメージ、世界観を大切にするという。
これは、グッチのような海外ラグジュアリーブランドと似ている。彼らは、もちろん流行りにあわせた商品も作るが、ベーシックな絶対外さないラインも大切にする。「ファブリックセレクター」という生地の選定を専門とする人がいて、素材はこれで、と決めたら5年10年同じものを使い続ける。ラインや色だけを少しずつ変え、そこからブランドのイメージが生まれ、世界観が定着してゆく。海外ラグジュアリーブランドに似た、ブランドの世界観を大切にする姿勢も、SECRET PLEASUREの魅力だ。

日本製で逆輸入、糸質で勝負

ラウンジウェアで一番の会社になるのが目標だという別所さん。現在7年目。10年目までの目標は海外進出だ。英語のHPも少しずつ作り始めた。もともと海外生まれのラウンジウェアだが、「日本製」を武器に逆輸入で勝負をかける。海外製品とは「糸質」が決定的に違う。日本の糸は水の綺麗さから美しく染まり、1本ずつが綺麗で長く使ってもボロボロになりにくい。品質基準も厳しく、海外製品にありがちな洗濯時の色落ちもほとんどないという。
現に海外で展示会に出品、感触も悪くない。しかし、日本と同じくターゲットを探すのに時間がかかると思うので、海外進出は少しずつ着実に進めてゆくそうだ。日本でも多彩な商品展開を考えている。例えば、入院時の患者さん向けに、ゆったりした、脱ぎ着のしやすいもの。縫い方に工夫することで縫い代やゴムの不快感をなくしたり、着た人がハッピーになるモノづくりを目指す。
価格帯としてももっと高価なものを作るか、逆に海外で安いものを作るか、悩みどころだ。もちろん、海外輸出なら日本製にこだわりたいので、海外で作る場合は別ブランドにして・・・と構想は尽きない。「家にいて、1・2時間身支度をして出て行く時にうちのお部屋着を着てもらえる、というのがもっと文化として浸透させられればいいな。」ラウンジウェアという未開の地に挑む別所さんの挑戦は、まだまだ続く。

(インタビュー・ライティング/保田直樹)