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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

「和ドレス」という新境地を切り開き、<br/>20年で14,000着以上のドレスを手がけた
Interview vol.59

「和ドレス」という新境地を切り開き、
20年で14,000着以上のドレスを手がけた

株式会社アリアンサ 上田惠衣香さん

http://aliansa.jp/

ミカレディ(株)にてデザイナーとして4年間勤務し、退社後、1990年有限会社を設立。1999年ウェディングドレスショップ「ALIANSA」をオープン。2004年、八王子に移転し、2008年、社名を(株)アリアンサに変更。翌年、八王子七国新店舗を完成。現在まで、約20年に渡りドレス製作に関わり、「和ドレス」というウェディングドレスの新ジャンルを開拓する一方で、タレント衣装や資生堂のイベント衣装、制服の製作など、衣装製作、衣装提供にも幅広く携わる。

「和ドレス」という新境地を切り開き、20年で14,000着以上のドレスを手がけた上田さん

結婚衣装において「和ドレス」という新しいジャンルを開拓した上田さん。法人向けタレント衣装、制服、個人向けウェディングドレスのオーダーメード製作、レンタル衣装と「衣装」に関することならば何でもお任せできる力強い存在だ。女性の様々な想いや夢が詰まった現場で20年以上働いてこられた経緯や、「和」に対する想い等を伺った。

お客様の顔が見える距離で自分の作りたいものを作りたい

小さい頃から物を作ることがとにかく好きだった。小学1年生の時、既成の服を分解して構造を調べ、2年生でセーターを製作、高校生の頃教室に通い機械編みを習う。この頃から蓄積されたモノづくりの経験が、今の上田さんの原点にある。服飾デザイン専門学校を卒業後、デザイン会社に就職したが、日々の仕事に追われるなかで、自分の仕事に疑問が湧いてきた。企業デザイナーは、売れる服、流行の服を作らなくてはいけないが、消費者の反応を直接見ることもできず、つまらないと感じるようになった。
会社を退職し、在職中、東急リゾートの衣装のデザインを担当していた東急ハンズ担当者に挨拶に行ったところ、仕事を受注することになり「法人でないと取引ができない」と言われたため有限会社を設立。当時25歳、「起業」ということはそれほど意識していなかった。
デザイン会社で務めていた時のつてや、口コミなどもあり、独立当初から仕事は次々と入る。当時は制服、衣装提供など法人相手の仕事が多かった。しかし、常に順風満帆だった訳ではない。起業後2、3年目、取引先である建設会社2社の倒産や支払いを踏み倒されたこともあり、ウェデイングドレスを主商品に据えることにした。

収益性、人材管理など苦手な経営と格闘する日々

ホスピタリティー精神あふれる上田さん。お客様に喜んでもらえるよう、たくさんのサービスをしたいと思ってしまうため、自分は経営者には向いていないと話す。起業するまでデザイナーとしてモノづくりに専念してきたこともあり、独立当時は経営を意識していなかったため赤字が続いた。最初は、こんなに忙しいのに何故、赤字なのかわからなかった。
経営者として従業員を厳しく管理することも苦手。仮縫いなど縫製の作業は上田さんが全て行うものの、業務の拡大とともに事務作業をするスタッフを増やした。1~2年前は5名いたが、インターネット販売などWebに関する作業を行うスタッフが、勤務中にゲームをしている姿を見つけても注意することができなかった。そのうえ、依頼した作業もやり直しが必要になり、上田さんのストレスはたまる一方だった。こんな思いを抱えるくらいなら自分でやった方がいい!と、現在はアトリエは上田さんのみで、ほかは全員縫製のできる職人さんのみで製作を行っている。ネット販売では上田さんの得意とする「その人に合ったドレス作り」も難しく、利益も少ないためネットオーダーの形式はストップした。

一生に一度きりのウェディングドレスでもリピーターを獲得するアリアンサの魅力

顧客一人あたりの打合せの平均時間は約2時間。誰とでもすぐ友達のようになってしまう上田さんは、友達を家に招いたように顧客をスタジオに迎え入れ、すぐに仲良くなる。身の上相談や雑談など全ての会話をドレス作りに繋げていく。お客様の目の前で次々デザインを提案。一人にじっくり時間をかけるオーダーメイド形式は、月に10名が限界だ。
お客様が自分に似合うドレスがわからない場合もある。上田さんはその人の美しさと魅力を引きだすドレスを初対面ですぐに見出せるという。外見はボーイッシュな方でも、ちょっとした仕草、話している雰囲気など内面の女性らしさを感じ、女性らしいシルエットのドレスを提案。「今までこんなドレス提案されたことがなかった!」ととても喜んでもらえた。本人の「こうなりたい」というイメージを大切にしその人に合ったドレスをつくりあげる。
上田さんのホスピタリティー精神あふれる姿勢、自分に合ったドレスの評判が口コミで広がり、注文は後を絶たない。1~2時間の打合せのためだけに大阪から打合せのためだけに訪れる顧客や自分の結婚式から何年も経て妹を紹介する顧客、友人に自分のドレスをレンタルし何度もクリーニングを依頼する顧客など、一生に一度きりの筈のウェディングドレスでもリピーターを獲得するのは上田さんの人徳のなせる業だ。


日本のいいものを日本人に自慢して使ってもらいたい

上田さんは学生時代から着物が好きで、帰宅すると30分かけて着物を着た。豪華絢爛な打ち掛けにも魅力を感じた。和ドレスの素材を京都で求めているが、打ち掛けを扱う業者は激減し、現在、国内で2社のみとなった。和ドレスの難しさは、普通のドレスと違い、柄の合わせ方や反物の生地が限られていることだ。同じ柄のものは2つ作れない、全て一点ものだ。和ドレスのファッションショーも実施したが、準備は想定していたよりも大変だった。
流通量や製品の扱いに限りがある中で、日本の「美」を自分の力を使ったらどのように発信できるのか、上田さんは業者とコラボし、海外も含めて商品開発に力を入れている。海外では、柄の意味や繊細な技術に裏打ちされた「和」は神秘的なものと捉えられている。
現在は性別、年齢を問わず使用できる和を使用した小物の開発を考案中である。「日本で作る日本のブランドを日本人にも自慢して使って欲しい」と話す上田さん。「でも、海外に先に良さを認知して貰い、逆輸入というやり方もある」と柔軟かつ意欲的に取り組む。「何にでも携わることができるのが私の強み」と話す上田さん。会社を大きくしたいとは思わない。一人の製作者という「変わらない原点」に上田さんはいつでも軽々と戻ることができる。その人の美しさを引き出すことを自分の役割とする上田さんの挑戦はこれからも続く。

(インタビュー&ライティング 本間 真紀子、杉田屋 まりえ)