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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

ビジネスに一獲千金なんてあり得ない。<br/>毎日誠実にコツコツと努力する。<br/>これ以外にない。
Interview vol.2

ビジネスに一獲千金なんてあり得ない。
毎日誠実にコツコツと努力する。
これ以外にない。

株式会社ラッシュ・インターナショナル 倉田 雅美子さん

http://www.rush-i.com/

1966年、名古屋市生まれ。結婚を機にトヨタ自動車を退職後、 フリーランスのパソコンインストラクターや司会業を続け、1997年個人事業をスタート。 2002年11月、オフィス支援や翻訳を主とする株式会社ラッシュ・インターナショナルを設立させ、現在に至る。 2007年、MBA(経営学修士)を取得し、個人情報保護士の資格も合わせもつ。 女性の高いスキルを活かして高品質なサービスを提供する会社です。

ビジネスに一獲千金なんてあり得ない。毎日誠実にコツコツと努力する。これ以外にない。

「手元に必要経費があったから起業してみようと。野望とか野心とか、そういったものはまるでなかった」。 会社を興し、成功していくプロセスを、あざやかにストレートに具現化しているのが名古屋に本社を置くラッシュ・インターナショナル代表取締役の倉田雅美子さんだ。気負わず、ありのままの自然体でビジネスを拡大させていく倉田さんに過去・現在・未来を語ってもらった。

母がお手本だった一人の人間としての確立

結婚を機にトヨタ自動車を辞めたのは24歳。その後もフリーでPCインストラクターを続けていました。当時はWindows95が発売され、まさにパソコンブーム。突然、誰もがPCを操作する時代になり、インストラクターは引く手あまたの状況となりました。子供が生れ、インストラクターの仕事を振り返ったとき、「どうにも大手企業 主導ではきめ細かなPC指導ができない」ことに気がつきました。私自身にも欲が出てきます。同じことをきまりきった形で進めるのではなく、もっと分かりやすく、より親切な…と。
そこからつながったのが個人事業です。私には初めから「起業する」意識などなかったわけですが、最も大きな理由は「設立に必要な300万円が手元にあったから」。壮大な野望なんてありませんでした。強いて言えば、法人化したほうが「信頼度」や「ブランド力」があり、ビジネスを進めるには有利だろうと思ったにすぎません。しかし、それとて対外的な部分が大半を占め、私自身が強く「会社を興したい」と思って実行したわけではないですね。
私が一生働きたいと思ったのは、恐らく母親が働いている人間だったからでしょう。母は薬剤師で今も現役ですが、当時も今も病院や患者さんから頼られる存在で魅力的な姿でした。一人の人間として確立しているためには、仕事が必要不可欠なものだと幼い頃から目で見て分かったのですね。

初めての悩みは人を採用することだった

会社を作るときリスクはあまり考えませんでした。そもそも事業は、仕入れがあって在庫をもつ業務内容ではなく、あくまでもサービス業でしたから。「ゼロ」になったとしても「マイナス」にはならないはずだ、と。無謀なことさえしなければ大丈夫だと思っていました。ま、ただ、仕事だけはどういう形にしてもやめようと思っていなかったので、だったら、会社設立を経験してみてもいいかな、と思いました。フリーランスの延長、個人事務所の延長、そして人が集まってきた…その結果が会社であり、現在の姿といえます。
今、役員4人、社員7人、登録スタッフ80人以上で会社を構成しています。こんなに楽観的にやってきたようにみえても、こと経営に関して言うならばいつも悩むのは「人」のことでした。私はいつでも自分一人で出来る仕事を続けてきたでしょう。だからこそ、最初につまり初めて人を採用するときは本当に悩んだし迷いました。「本当にいいのか」と。個人で仕事をしている者にとって、一人の人間を採用するということは、毎月10万円でも15万円でも年間通すと大きな額になっていきます。人件費は大きい。もし採用しなければ、その15万円は自分が仕事のために自由に使っていけるお金なのだと思うとき、やはり躊躇してしまいます。だって15万円を払っても、そのお金に対するリターンがなければ会社は成り立ちません。けれども2人目を採用したあとからは、自分でも完全に割り切ったと思います。「リターンがくるまで時間がかかる」ようであれば、その分は自分で稼がなければならない、と。人を採用する決定的なポイントは「自分自身と合うか、合わないか」。それだけです。初めての印象がいいのかどうか。波長とかリズムとか、そういったものが自分と合うか合わないか。もうそれしかありません。もちろん失敗したことも何度もあります。手痛い経験もしました。

得意分野で顧客が期待する以上のビジネス成果を

現在、当社のビジネスでは販売促進支援コンサルティングが最も大きな位置を占めます。対象は全業種で特に店舗を持つ会社。クライアント様の店舗の売上高や認知度を上げていくためのあらゆる手法を考えてお手伝いしていく…それがビジネスの核です。需要のターゲット層、ブランドマークのデザイン、パッケージ、ディスプレイ、装飾、パンフレットなど多岐にわたりますね。この市場はどちらかというとこれまで大手企業が寡占化してきた分野です。しかし、一件あたりの金額も膨大なものが多かったはず。それだと中小企業や店舗だとオーダーしたくても不可能なんですね。ですから仮に大手なら1000万円の案件であっても、ウチのような会社であればその数分の一、数十分の一でも受けていく。高い額の中には大手ならではのブランド料が入っていることも否定はしませんが、本当の内容・中身だけを言えば、大手もウチもやっていることは同じ。しかもそういったことを納得してもらえる時代になりました。
トヨタ自動車時代の上司が教えてくれたことに「キミはトヨタがお願いに行くようなビジネスをしなければいけない」という言葉があります。これは単純なようで実は大きな意味があります。得意分野をもつということは、同時に「顧客の期待やニーズを超え、私たちだからこそ生み出せる価値を提供する」ということにほかなりません。

IPOは意識するがそれとて必然ではない

会社の規模は大きくしていきたいと思っています。起業した頃、私は「会社は小さなままでいい」と言い続けてきました。ところがあるとき、2000万円ほどで商品カタログを請け負って作っていまして、そのクライアントの社内チェック不備による記載ミスが発覚しました。クライアントの社長はものの30秒で「カタログ破棄・作業やり直し」を決断しました。2000万円ですよ!このとき悟りました。「会社が大きくなければできない決断というものが存在する」と。企業に体力があるということはこういうこと…を痛感しました。
この先、5年から6年以内にふわりと上昇するキッカケをつかむ瞬間が必ずきます。そのタイミングをしっかりとつかめばIPOを考えるかもしれません。さらに自分自身が上場したい、と思わない限り、決断はしないでしょう。今は売上高が3億円や5億円でも上場できる時代ですが、私はどうせやるならしっかりとした会社を作って上場したい。その意味ではやはり売上高10億円がひとつのメドになるかもしれません。形やスタイルにとらわれず見栄でもなく、とにかくしっかりした会社を築き上げることが先です。ただ、年々上場を意識するようにはなってきました。ビジネスにおいしい話なんてないのです。ひたすら努力し一歩一歩コツコツと。これが私の信条です。誠実に一つひとつを積み上げることです。きちんとやっていれば、ひとりのお客様が満足してくれれば、次につながっていきます。

(取材・文 市川 徹)