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編集部特別企画

女性社長.netのスペシャル企画や、女性社長をサポートしたい企業様からのお知らせです。

編集部特別企画2009.10.08 (木)

識者に聞く!Vol.5
高千穂大学 経営学部
教授 鹿住倫世先生

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<PROFILE>鹿住 倫世(かずみ ともよ)
高千穂大学 経営学部
(起業・事業経営コース 事業創造論他担当)
教授

1986年中小企業事業団入団。職務の傍ら、1996年法政大学大学院経営学専攻修士課程修了、1999年同大学院経営学専攻博士後期課程単位取得満期修了退学(経営学修士)。1998年10月より中小企業庁に出向(2001年3月31日退職)。
現在、高千穂大学経営学部教授(起業・事業経営コース 事業創造論他担当) お茶の水女子大学、慶応義塾大学理工学研究科、法政大学大学院、白鴎大学非常勤講師。
中小企業事業団在職中は、ベンチャー支援センターの運営、アドバイス業務やベンチャー支援関連施策の企画・運営に携わった。
研究活動における専門分野は企業家活動論、ベンチャー企業経営論、インキュベーション論。


研究者の視点から、女性起業家を支援。

今回は、中小企業支援に20年以上携わり現在ではベンチャー企業研究を されている、高千穂経済大学の鹿住先生にお話を伺った。 最近では、「女性企業家の企業活動におよぼす職業経験の影響」を論文として残している。男女雇用機会均等法施行で女性を取り巻く環境が変わったこと、環境変化から企業家が今後どのように活躍の場を広げていけばよいのか、をご教示いただいた。

<雇用機会均等法20年。女性企業家の流れが変わっている。>

これまで一貫して創業支援・ベンチャー支援に携わり研究をしています。 1986年に中小企業事業団(現・中小企業基盤整備機構)に新卒で入団以来、中小企業関連の仕事を中心とし、入団8年目から窓口相談、マッチングイベントの開催などに携わってきました。
 当初、相談にくるのはほとんどが男性で女性がちらほら。女性の起業は分野も限られており、飲食・レストラン、生活関連ビジネスが中心でした。かつ事業というよりも「お店を持ちたい」という方が多かった。98年ごろからSOHOという考え方が出てきてSOHO分野では男女双方が増えましたね。特に、電子化への移行の時期でもあったので、SOHOでできる仕事が増えたんです。そしてITバブルの2000年前後に新しい女性起業家が出現し始めた。論文でも「新人類-女性起業家-」として研究結果を報告しましたが、例えば、インデックスの井上さん、ディー・エヌ・エーの南場さんなど。海外経験やサラリーマン社長経験、コンサルティング経験など十分にキャリアを積んだ層の起業が新しい女性起業家像です。
男女雇用機会均等法が施行されて20年余り。女性の役員も増えたし、MBA取得者、男性と差異のない処遇、育成をする会社が増えてきた結果です。論文でも書きましたが、キャリア層の起業は特に男女の収入、年商、利益、参入業種の差異が認められませんでした。むしろ女性の方が収入が高かったり。女性起業家の分布にも変化が生まれてきたということです。

<これからの会社に求められるのは、知識産業。知恵が必須。>

 少子高齢化が進み、今後は日本の人口減が必至です。マーケットの縮小から日本企業の生き残る道の一つは、グローバルベンチャーです。日本経済発展の為、本社は日本に置き海外でもニーズがある商品を生み出すこと。シンガポールの知的財産戦略がひとつのモデルですね。
2つ目は、サービス業。まだまだ伸びる余地があると思いますが高付加価値で挑む知恵が求められます。
3つ目は、イノベーティブなコストダウン。仕組みや既存の形態を抜本的に変えることで価格の新しい基準を作ります。 一方スモールビジネスで生き残るモデルとしては、イタリアの職人的集団が参考になります。フランスの高級ブランドで使われるような特殊・高級な生地などを、一流の職人たちがそれぞれの得意分野を生かしてネットワークを組んで作り上げるイメージです。マーケットは小さいけれど高利益の商品・サービスを作り出すことです。
 小さいマーケットにいかに高付加価値な商品・サービスを投入するか、がポイントです。あるいは自社で生産するのではなく、開発した技術を特許化するなどして、ライセンスビジネスとしてグローバル展開する。
 ただ、それぞれの企業が専門性を追求すると、単独でできる仕事の範囲は限られます。そこで必要に応じてスモールビジネスが集合離散して協業するという方法が適しているのです。そのためには、プロジェクト管理や組織管理、資金管理など、マネジメントを学ぶ必要もあると思います。MBAコースで教えているマネジメント知識は、一つの型なのでそういったものをもっと多くの人が学ぶべきだと思います。

<シリアルアントレプレナーのススメ。売れる会社をつくろう。>

シリアルアントレプレナーとは、何度も会社を興してそれらを軌道に乗せる起業家をさします。例えば妊娠・子育て中に会社を作って軌道に乗せて売却をして、再び会社に雇用される、というモデルもよいのではないでしょうか。 子育て中に自分のペースで事業を行い、ちゃんと自分の会社の事業がいかにオススメかというプレゼンテーションをできるようになることが大切です。
 子育て中もブランクを作らない。そんな複合効果もありますね。小さく立ち上げそれなりの価格で売却する。そんなモデルもありだと思います。課題は雇用の流動化ですね。日本企業は、「経営経験がある人間は扱いづらい」という固定観念が強いですから。売却をするかは別として「売れる会社をつくる」ことが大事です。さらに、立ち上げ屋と育て屋が別でも構わないと思います。経営のダイバーシティー化ですね。最初立ち上げた方がCEO(最高経営責任者)を雇い自分はCTO(技術担当役員)に徹するなんていうのも事業の過程では必要です。フレキシブルに自分の強みを考えるとよいでしょう

<もっとアイデアをオープンに。>

先日、ビジネスプラン作成講座を担当させていただきました。参加者はすでに事業展開をされている企業の経営者もいらっしゃいましたが、発表の場で一人もビジネスプランを発表していただけなかったのが残念です。アイデアを人に伝えることで、人脈ができ、知恵が集まります。人が集まって知恵を出し合い大きくしていくのもこれからは必要だと思います。
 アイデアと事業って大きく違うんです。起業して成功している人は、アイデアを自分から情報開示して、アイデアを客観的に評価してもらう方が多い。自分の立ち位置を客観評価してもらうことが売れる会社作りの早道です。初めにキャリア経験を積んだ女性起業家が増えてきたというお話しをしましたが、これまでキャリアを積む機会が少なかった人は、自分の人生のたな卸しをしたらよいと思います。主婦の目で見た小さなアイデアを事業にした方々もいます。身近なことでできることを発掘し、元手をかけずにパートと並行して始めるのも一手でしょう。そして事業化の際に多くの方と協業する事も一つの方法です。自分の事業を紙に書いてみる。そこから異なる得意分野を持つ人が集まりビジネスが始まります。


鹿住倫世先生の近著

 

        2_2       2_3
      『ベンチャー企業経営論』(2002)有斐閣(共著)    『2009年版新規開業白書』中小企業リサーチセンター