ニューヨーク発「TESAGE」の販売。
世界展開を視野に。
1967年生まれ。宮城県出身。女性美術大学卒業後、6年間テレビ業界でスタイリストを務める。1994年に渡米し、ニューヨークで映画のコスチューム・デザイナーとして働き始める。 その活動と並行して、2000年に手さげバッグ会社YUKIKO SATO NEW YORKを設立し、バッグや小物の製造・販売をスタート。現在もNYでデザイナーとして活躍中。※写真提供:女子美同窓会
ニューヨーク発「TESAGE」の販売。世界展開を視野に。
先週に引き続き、ニューヨークで活躍するYUKIKO SATOさんのお話。前編では、起業までの道のりを紹介させていただいた。今回は、ニューヨークで経営をすること、について起業初期の苦労や、今後の目標について語っていただいた。
独立分野も模索。幼少の頃の体験が事業内容のヒント。
目標は、スタイリストとしてアメリカ人と対等に仕事をしていくこと。起業するなら、スタイリスト事務所にしようとアメリカに渡った当初は考えてたんです。しかしユニオンに属さないなら、インディーズの仕事のみ。インディーズは予算が少なく、とても食べていけません。しかもニューヨークの冬は寒い!。寒いニューヨークでインディーズの仕事をするのはかなり過酷です。だからスタッフの確保も大変。冬は休業状態になるし、夏に仕事が固まってやってくる。スタイリスト専業では事業が成り立たないと考えていました。一方で、インディーズの仕事は予算がないから工夫が求められます。洋服を作って予算を安く仕上げることもありました。昔とった杵柄ですね。母が残り生地でかばんを作っていたのも見てきたので、私も残り生地で小物を作って提供していたんです。そうしたら、「そのかばんが欲しい!」という声が次第に増えてきて、98、99年にはお店に委託販売もしていただくまでになりました。反響がそれなりにあったので、これなら「年中売上げがたつ」と思い、グリーンカードを取得したら会社として始められる実感ができました。
販売開始当初は、ゲリラ的に。名前も変更!
2000年のバッグ会社設立当初は、オンラインだけで販売するつもりでした。もともとアメリカ人はWEBサイトで物を買うことには抵抗がない。というのも、国土の広さから通信販売に慣れているんです。ですが最初はかなり大変でした。商品を見ないと買ってくれないと気づいたんです。「YUKIKO SATO」の名前を誰も知らない上、覚えにくいんですね。インターネット販売をしても、そもそもインターネットにアクセスがない。無料掲示板に掲載もしましたが効果がない。やはりノンブランドの場合、一度実物を手に取って見ないと買ってもらえないんです。なので、ストリートで売ったり、毎週末5箇所くらいのマーケットに出展し、色んな人たちに見てもらえるようにしました。いまもSOHOで売ったり、デザイナーマーケットには出展しています。ですが、「YUKIKO SATO」という名前は外国人にとって覚えにくい。覚えやすい名前ということで初期から「TESAGE」と名づけて販売しています。皆さん、フランス語感覚で意味は分からないけど「テ・セージ」と発音してくださっています。(笑)
他にも苦労はあります。資金繰りで苦労したときは投資家を募ったりもしました。起業後、3年実績を積んでいたお陰ですね。ビジネスプランもしっかりかけない状態でしたが「Passion」で投資家についていただきました。もちろん、少額でしたが。5人の投資家にご協力いただいて乗り切ったのは、私にとって非常に大きな経験の一つです。
ニューヨークはビジネスが成功しやすい。
「TESAGE」が支持されている理由は、色味・形の洗練度合い・シンプルさ。生地は実はコストも考えてアメリカのビンテージものを使っています。日本人から見ると、「日本人らしくない」と言われますが、海外の方から見ると、色の組み合わせで日本人が作ったものに見えるようです。アメリカは原色系のビビッドカラー商品が多いですから。他の人と同じものを持ちたくない、と考えるお客様が多く客層は20-70才代と幅広いです。もともとレスポールなどをベンチマークしているので、若手を意識していたのですが、かばんの軽さが年配の方にも受けているようです。
また驚いたのは、売出しから3年で1.5万個ほど売れているのですが、ニューヨークであまり見かけたことがないこと(笑)。「NYはビジネスが成功しやすい」と言いますが、ひしひしと実感しています。ニューヨークには全世界からの旅行者が集まっています。NYで商品を購入し、各国に持ち帰って方々で広めてくれるんですね。オンラインでリピートし始めたとき、実感しました。現在オンラインではイギリス、フランス、イタリア、スウェーデン、ネザーランドからの発注もあります。
「TESAGE」ブランドを世界のものに。
2005年にAmazon.comが洋服などの売り出しも始めた際、声をかけていただき、洋服・バックカテゴリに掲載してもらいました。Amazonに載っている商品であれば大丈夫、という安心感は大きかったです。手に取らなくても買っていただけるようになったのはこのときからです。そして現在、98%が現地で購入されるお客様です。アメリカ生まれの中国人が多いですね。中国人にとって「日本人がつくるものは縫製がよい」という安心感とブランドは大きいのではないでしょうか。
現在は日本人スタッフ4名で頑張っています。設立当初は、インターンの人を雇っていました。3年を機に独立した人もパートナーになった人もいます。独立のノウハウを学んでもらうことは歓迎。独立をしたい人は意欲的だから一緒に働きやすいんです。会社におんぶにだっこではないので、コスト意識も強い。いいアイデアももらえることだってあります。その代わり、毎週レッスン日を設けて、各人が学びたいことを教えます!という時間を作っていました。私にとって、アメリカでのビジネスは向いているみたいですね。文化や宗教の違いを理解しなければいけませんが、やりとりがストレートなので話しが早いところが私の性分にあっています。今後の目標は、「TESAGE」を世界に。目下の目標は、全米展開です。その次はヨーロッパ進出を果たしたいですね。