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編集部特別企画

女性社長.netのスペシャル企画や、女性社長をサポートしたい企業様からのお知らせです。

編集部特別企画2007.11.22 (木)

識者に聞く! Vol.3
東京女学館大学 教授 経営学博士 西山昭彦先生

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東京大学 社会科学研究所
教授 玄田有史先生


<PROFILE>
東京女学館大学 国際教養学部 国際教養学科 
教授 経営学博士

一橋大学社会学部卒業後、東京ガス株式会社入社。
ロンドン大学大学院、ハーバード大学政治学大学院に留学し、修士課程修了。
現在は、東京ガス株式会社の西山経営研究所長と、東京女学館大学国際教養学部教授という2つの顔を持つ。東京ガス入社当時から「男女平等」をライフテーマとし、管理職になって以降は優秀な女性を支援・育成し、女性管理職の輩出に尽力。東京女学館大学ではキャリア論、経営学を専門とし、女子学生のキャリアデザイン、就職支援を行う。母校である一橋大学の女子学生の就職支援講座も7年前からボランティアで継続、女性管理職の勉強会も主宰するなど様々な女性の就職・キャリア支援活動を続けている。
 
近著
「こま切れ時間活用術」(日本実業出版社)
「できる人の書斎術」 (新潮新書)

リンク
 「西山経営研究所」ホームページ
http://tokyo-gas-nishiyama.com/index.html


–「世の中男女半々なのに、女性が活躍できないのはおかしいでしょう?–
「同じ能力で差別があるのはおかしい」との疑問を早くから持ち、女性活用を支援し続けてきた西山先生。勤務先は日本を代表する大企業。「男社会」の中心では「(自分は)異端児でしょうね」と穏やかに笑う。語り口もソフトで、ファッショナブル。多くの男性管理職が失っている「感性」を保っている証なのだろうか。 男社会のルールを熟知しつつ、その論理に自ら疑問を投げかけ内部から改革をはかる。女性にとっては頼もしい存在である先生に、今回は女性リーダーについて話を聞いた。

<女性リーダーの強みは「感性」、弱みは「論理」>
リーダーの資質として必要なのは、1つには仕事を遂行するスキルが高いこと、もう1つは「その人についていきたい」と思わせるパーソナリティでしょう。スキルの面で、最も女性の強みとなるのは感性ですね。男性は趣味や娯楽も少なく、感性を失ってしまった人が多いです。感性を捨て、知性で生きて出世しているわけです。でも、今の成熟社会では機能的な部分はかなり出尽くしています。デザインなど感性の部分がヒット商品には欠かせないのに、まだまだそれがない男性が企画しています。
パーソナリティでの1つのモデルはダイエーの林文子副会長ですね。組織を回していく力が抜群で、そのポイントは「日のあたらないところに日をあてる」力です。人はどんな時に頑張れるか、と言うと自分のやっていることに価値を感じた時なんです。彼女はダイエーで全国の支店を1つ残らず回って、パートの人の仕事の重要さや、いかに感謝しているかを伝えました。それで、勤続何十年の人が感激して、やる気になっています。
反対に企業にものを売る場合、女性の情緒的すぎて論理的でない点は弱みです。打ち合わせなどでも、どうも女性は話がずれがちな気がします(笑)。個人のつきあいなら「好き」なだけでも買えますが、対企業では感情だけでは通りません。論理性がいります。また、足元の仕事の責任感は高いけれど、枠を超えて隣の部署・分野に視線がいきにくい傾向がありますね。もう少し高いところから俯瞰して見る、そのためにはある意味の「いい加減さ」もリーダーには必要です。

<管理職は「調整」、起業家は「尖鋭」>
企業内の管理職と経営者では必要な能力も違いますね。企業の中で出世するには、調整が重要なファクターで、内部にうまく順応しつつ改革していく力が大事なんです。けれど起業家はマーケットに働きかけなくてはどうしようもないですよね。新たな市場価値を生まないといけないので、尖鋭化していることが重要です。女性は、得意な感性を生かせる分野であれば、市場価値は生み出しやすいのではないでしょうか。例えばデザインとか、コーチングとか、パーティとか。また、きちっとしている人には、経理や会計もいいかもしれません。いずれにせよ、ディテールをつめる分野には女性が向いているのではないでしょうか。
男女の経営者を比べると、女性経営者は追われている感じの人は少ないですね。男性の方が分刻みで動いていて血走っている感じがします。女性も一生懸命働いてはいますが、拡大志向の男性ほど切羽詰っている感じがしないですね。それはいいことだと思いますよ。男性の方が負荷の高すぎる働き方をしているということですから(笑)。

<経営には「体系的な知識」が必要不可欠 >
経営においては、女性は拡大ではなく安定志向が強いと思います。「自分の目が届く範囲」で留まる人が多いですね。売り上げが10億を超えるあたりが、自分でコミットできなくなる転換点だと思います。そこからはマネージメントになってくるので、どうしても手法を変えなければいけないのですが、そこに壁がある気がします。
マネージメントの経験も関係があるかもしれません。男性は、将来は出世をするつもりで企業に入るので、マネージメントに興味があり、新入社員でも知らず知らずに経営を学んでいます。女性はそうでない人も多く、いきなり抜擢されて困惑する女性管理職も多いです。女性経営者と話をしていても、経営の基礎理論の知識が少なく、心配になることがあります。体系的な知識を持って、「今の問題は全体のどの部分か」を理解している人はやはり違います。理論的なバックボーンは「海図」なんです。航海でも海図の有無で、リスクが全く違います。夜間大学院などで学ぶと変わりますよ。ドラッカーも言っていますが、単発セミナーや本などの分散された知識では意味がないんです。価値があるのは体系化された知だけです。ビジネス観や世界観、そのフレームがいつ作れるかが大事で、それができると経営、人生が非常によく見えるんです。

<行政の応援がないなら、「ネットワーク」。小規模なりの工夫も必要 >
 今、企業内の女性には人事制度的な追い風が吹いていますが、起業では対等の勝負ですから、女性だけの支援策は出ないでしょう。育児休業した女性が復帰する仕組みは、企業ごとに手厚くなっています。しかし、いったん退職した人の復帰はまだ一部です。そこで社会的には、復帰の代わりに独立がしやすい仕組みが作れれば良いと思いますね。
ただ、大企業はすぐに独立した個人や小さい企業との契約はしません。アメリカは、個人との契約が普通でSOHOも多いですが、日本の企業は取引先を絞り込んでいます。
ネットワークリーダーシップといって、「自分のできることは限られているので足りないところを補うネットワークを作り、それをうまく動かそう」という概念があります。女性は俯瞰が苦手といいましたが、自分は隣が見えなくても、隣が見える人と提携すればいいわけです。大手商社や広告代理店が強いのは、どんな要望が来ても答えられるからなんですね。規模が小さいと課題が出てきても「ウチではできない」と諦めてしまうでしょう。それを放置せず、お互いに紹介や協力ができるとうまくいくわけです。拡大を目指さないのであれば、小さいなりのネットワークの仕組み作りも重要かもしれません。


【編集後記】
女性の強みは「感性」であり、「生活者感覚」。西山先生の取材を経て、ビジネスの構造は、着実に変化しているのだと感じました。 仕事と生活が分断されていた今までとは異なり、より生活に根ざした事業が求められている今、「女性発」の事業の価値はますます高まるはずです。
1人1人では、まだまだ小さい声も、企業・女性同士が結びつき協力しあうことで、今までのスキームとは違う波が起こせるのではないか。そんな期待を持ちつつ、そのうねりを起こせるネットワークを作りあげていきたいと思います。
(女性社長.net編集部)

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