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編集部特別企画

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編集部特別企画2024.12.19 (木)

『「継ぐ」を語る。“事業承継支援”今とこれから』イベントレポート――前編

2024年11月22日、「女性のための事業承継ステーションSupported by エヌエヌ生命保険株式会社」による、女性の事業承継支援をテーマにしたイベント『「継ぐ」を語る。“事業承継支援”今とこれから~事業承継した女性経営者の現状、先進支援事例や地域の実情を紹介。これからの支援について、ともに考える~』が開催された。

イベントは3部構成。第1部と第3部の後には、登壇者に来場者も交えたディスカッション・パート「対話で見つける支援の新たな可能性」。本音ベースの生々しい体験談や切実な要望なども飛び出して大いに盛り上がった。

今回のレポートでは第1部のトークの模様を中心に、その後のディスカッション・パートについてもお伝えする。

イベントの開催概要はこちらをご覧ください

 


(左)エヌエヌ生命保険株式会社 小橋秀司さん
(右)女性社長.net企画・運営 株式会社コラボラボ代表取締役 横田響子

女性の事業承継の当事者と支援団体、
自治体が一堂に会し現状や課題を共有するために

開催にあたり、中小企業サポーターであり、中小企業経営者のための生命保険を取り扱うエヌエヌ生命の小橋秀司さんと、日本有数の女性経営者ネットワークを持つ女性社長.netの横田響子より、イベントの趣旨説明が行われた。本イベントの背景には、エヌエヌ生命と女性社長.netが2018年から続けてきた女性事業承継者支援活動がある。

女性承継者に焦点を当てるようになったのは、エヌエヌ生命の小橋さんが、生命保険会社として保険以外に経営者に役立つサービスを模索する中、実際に保険金を受け取った約300社にインタビューを行ったことがきっかけだった。
そこから見えたのは、配偶者の逝去により妻が経営を継ぐケースが思った以上に多いという事実。さらに大手データ会社の調査をもとに独自に試算したところ、国内の中小企業における代表者交代(親族内承継)の、なんと約4割(39%)が女性による事業承継であることがわかった。
そこで2018年、女性経営者支援で実績のある横田さんに声をかけ、両社の協業が始まった。そこから生まれたのが「女性社長のためのココトモひろば」や「女性のための事業承継ステーション」(以下、ステーション)だ。

ステーションでは当事者の声を広げるため、これまでも数回、事業承継を経験した女性経営者を招いたイベント等を開催してきた。そして「女性の事業承継経験者」「事業承継の支援団体」「事業承継支援に取り組む自治体(政策立案・実施者)」の三者が一堂に会し、語り合う機会に発展させたのが今回のイベントだ。
三者の視点からなる3部構成のトークセッションに加え、参加者も含めて議論を交わすディスカッション・パートを設けている。様々な視点から女性承継者支援の現状と課題について語ることで新たな気づきをもたらし、今後の具体的な施策を考える場づくりとなることを目指した。

 

第1部 支援者トーク
「女性事業承継支援の今を問う:課題から実践へ、今できること」

第1部では、実際に事業承継に直面し、困っている人を支える支援機関の皆さんが登場し、事業承継の実態、特に女性が事業承継するにあたっての課題について語り合った。
登壇者は高知県の事業承継・引継ぎ支援センター統轄責任者の原浩一郎さん、女性の事業承継者を支援する静岡県女性経営者団体 『A・NE・GO』を立ち上げ、支援に取り組む山崎かおりさん、そして中小企業庁で後継者問題に取り組む薮内亮我さんの3名。
ファシリテーターを務めるのは、明治大学商学部教授の浅井義裕さん。専門は中小企業における金融だが、そこから発展して、近年は事業承継問題にも研究領域を広げている。

第1部登壇者プロフィール詳細を読むにはこちらをクリック
第1部登壇者プロフィール
浅井義裕/ファシリテーター
明治大学商学部教授。著書に『中小企業経営における保険の役割』(中央経済社)等がある。原 浩一郎
高知県事業承継・引継ぎ支援センター統括責任者
平成30年四国銀行取締役徳島本部長を退職後、現職に就任。「廃業から引継ぎへ」をスローガンに、事業承継に取り組んでいる。

山崎 かおり
静岡県女性支援者団体A・NE・GO代表 株式会社山崎製作所代表取締役
1991年山崎製作所入社、2009年同社代表取締役就任。2020年女性の事業承継者を支援する静岡県女性経営者団体「A・NE・GO」を立ち上げ、内閣府「男女共同参画社会づくり功労者」女性のチャレンジ賞受賞。

薮内 亮我
中小企業庁財務課
令和4年度入省。中小企業庁、資源エネルギー庁を経て、2024年6月より現職。現在、中小企業の後継者(アトツギ)支援を中心に担当している。

 


娘さんも後継候補にすれば候補者は倍になる!
後継者不足の切り札になるのでは?――高知県 原さん


高知県事業承継・引継ぎ支援センター統括責任者 原浩一郎さん

原浩一郎さんが所属する事業承継・引継ぎ支援センター(以下、センター)は、事業承継に関する様々な困りごとの相談窓口として、国が各都道府県に設置している機関。

高知県の悩みは、経営者の高齢化と人口減少だ。事業所の数も毎年3%ずつ減少しており、その理由として「跡継ぎがいない」というのも大きな割合を占めている。
廃業の前に、早めの事業承継(跡継ぎ探し)を進めるため、様々な事業者の相談を聞くうち、「後継者候補といえば息子」という根強いアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)があると気づいた。
そこで5年ほど前から、センターでは「跡継ぎ(息子)はいない」という経営者に、「お嬢さんはどうですか?」と問いかけるようにした。さらに女性のための事業セミナーなどを開催し、積極的に事業承継支援を進めている。過去4年間の支援実績では、事業承継が成立した95件のうち23件が父親から娘への引継ぎだった。

実際、四国は女性社長の比率が高く、全国トップの沖縄県、2位が徳島県、そして高知県は6位。「企業経営に男女の違いは関係ありません。親族承継で男女比が1:1になるのが理想です」と、原さんは断言する。


突然の事業承継となっても、今ある窓口では
相談できない女性特有の悩みがある――静岡県 山崎さん


静岡県女性支援者団体A・NE・GO代表 山崎かおりさん

静岡から参加した山崎かおりさんは、自らも事業承継経験者であり、現在は女性経営者団体「A・NE・GO」を立ち上げ、突然事業承継することになって困っていたり、自分が継ぎたいけれど何から始めればいいかわからないといった、女性のための相談会や交流会を積極的に開催している。対象は静岡県内だが、遠く千葉や大阪から静岡までやってくる人もいるという。

「相談窓口はいっぱいあるけれど、突然のご主人の逝去で途方に暮れている人や、『お前に経営なんかできるはずないと父に猛反対されて困っています』といった、女性ならではの心の内を吐露できる窓口がない。私たちの個別相談に来て、『初めて悩みを打ち明けることができました』と涙した人もいました」と山崎さん。

ご自身もお父様の大反対を押し切って事業を継いだ経験があるだけに、「女性が本当に安心して悩みを打ち明けられたり、一緒に勉強していける環境を作りたい」、そして「『頑張れば私もこの人みたいになれる』と思ってもらえる、ロールモデルとなる女性経営者を育てていきたい」と意気込む山崎さん。まさに女性の事業承継界のけん引者だ。


女性の事業承継支援と並行して
将来の後継者を育てる「アトツギ甲子園」――中小企業庁 薮内さん


中小企業庁財務課 薮内亮我さん

3人目、中小企業庁の薮内亮我さんは、高知県の原さんが所属する事業承継・引継ぎ支援センターを所管する部署に在籍している。
現在日本では経営者の高齢化が深刻化しており、後継者がいないという理由で廃業を考える経営者も多い。そのため少しでも早い事業承継を進めようと、センターを通じて全国の事業承継を支援。その一方で、次世代の後継者を育てることも大切だという問題意識から、2021年(令和2年)から始まった中小企業庁主催「アトツギ甲子園」を紹介してくれた。

2025年2月に開催される第5回大会に向けて、現在エントリーの真っ最中というアトツギ甲子園は、39歳以下の若い跡継ぎ候補者たちが、10年後、20年後に今の事業をどう伸ばしていきたいか、どんな事業を始めたいかをプレゼンし、競いあう一種のビジネスプランコンテスト。全国の応募から書類審査や地方大会を勝ち抜いた人が、ファイナリストとして決勝大会に臨む。

もちろん女性の参加者もいる。第3回では岡山から参加した20代の女性が決勝に進出。
「若いうちはやはり現役経営者の力が強く、なかなか声を挙げられません。でもアトツギ甲子園に出場したことでメディアの露出が増えたり、アイデアが注目され、スムーズな事業承継や事業の成長に繋がったという報告が出てきています」と薮内さんは語る。


女性事業承継者の支援は必要か? そして課題は?
議論白熱のトーク・セッション、そしてディスカッション・パートへ

各人の報告の後は、3名によるトーク・セッション。
「女性事業承継者への支援は必要か」「女性の事業承継における現状の課題」「解決に向けた理想形、各地ですぐできることは?」という3つの論点を軸にトークが繰り広げられた。


ファシリテーター 浅井義裕さん

浅井先生の研究によると、事業承継した企業はその後概ね業績が伸びていることがわかってきたという。ただし「承継した人が女性の場合はどうか」という視点での分析は無く、「研究者としての今後の課題」という。

続くディスカッション・パートでは、来場者から完全ボランティア団体「A・NE・GO」の歴史や相談内容についての質問が飛び出した。そこから議論は「女性経営者や承継予定者のためのコミュニティ作りの必要性」や「女性の事業承継者のために支援機関はどのようなアプローチを取るべきか」といった問題へと発展。限られた時間の中で、活発な意見交換が行われた。

 

詳しい発言内容やディスカッション・パートにご興味のある方はアーカイブ動画をご覧ください。後編では第2部からエンディングまでをレポートします。

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