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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

出産後のケアを通じて、<br/>お母さんのことをとことん大事にしたい
Interview vol.115

出産後のケアを通じて、
お母さんのことをとことん大事にしたい

菜桜助産所代表 堀田久美さん

http://nao-sanba.com/

静岡県富士市出身。日本赤十字看護大学第1期生として看護学を学び、助産師、保健師、看護師の免許を持つ。2012年 東京大学大学院博士課程修了にて「分娩による骨盤底筋群の損傷」に関する研究を行い、博士(保健学)を取得。病院・診療所勤務で9年、助産所で14年、大学教員を5年の職歴を持ち、2001年4月、富士市唯一の有床助産所となる『菜桜(なお)助産所』を開設。現在、菜桜助産所の院長、東京大学大学院医学系研究科客員研究として活動中。女性の生涯にわたる健康と、育児環境の改善の為に、大学で研究を行いながらも臨床現場で最先端の知識と最高の技術で質の高いケアの提供を目指している。

「目指す姿は『ママのママ』」                         出産後のケアを通じて、お母さんのことをとことん大事にしたい

J300アワード受賞者のその後を追う、“J300アワード受賞者に聞く”インタビュー企画。全3回シリーズでお届けする第三弾として、菜桜助産所で質の高い産後ケアを提供する堀田さんを取材。堀田さんは2017年プレミアムミニJ300 in 静岡に参加。その後J300アワードにノミネートされ、見事大賞を受賞した。女性が産後もずっと幸せでいられる社会を目指して、女性のよりどころとなれるような助産所を目指してきた5年間を追った。

J300は1回目の脱皮の機会。「自分がビジネスを頑張ってよいのだ」と思えた

2001年に起業して今年で20周年を迎える菜桜助産所。起業のきっかけは、堀田さんが当時病院などで助産師として働いていた際、出産後のケアが十分にされておらず、女性があまり大事にされていなかった現状に疑問を感じたこと。当時、富士市内には助産所がまったくなかったので「私が始めよう」と決心し、看護学の修士課程を終えた後に、菜桜助産所を開業した。ただ起業したばかりの頃は、人とお金を回すことが大変だった。ずっと助産所のない地域だったので助産所に対する理解を得るのが困難で、どうしても「社会貢献」という形でとらえられることが多く、事業として続けるのに苦労した。

2016年、知り合いの紹介でJ300を知り、応募することになった。J300の選考過程を通じて、異業種で頑張る起業家の方々との出会いがあり、地域で頑張っている仲間ができた。一番の収穫は、「ビジネス」の判断軸でのコンテストであるJ300アワード大賞を受賞することができたこと。地域・社会貢献的な視点だけでなく、「ビジネスとして頑張ってもいい」と認めてもらえたような気がした。その時期は医療職の自分がお金を稼いで良いのか悩んでいた時期で、ちょうど新しく医療法の枠に収まる助産院だけではなく、ビジネスとして広げるために、正式に会社として立ち上げた時期だった。そんな時期に全国一位をとることができて、自分の考えが脱皮できた。周囲の方からも「社会貢献を頑張る人」だけではなく「ビジネスをしている人だ」と知ってもらえるようになり、周りの自分に対する見方が変わった。


菜桜助産所の活動に参加するお母さんと子供たち

女性が産後もずっと幸せでいられる社会を目指して、「ママのママになる」

女性が産後もずっとほっこり幸せでいられる社会を目指して、活動を続ける堀田さん。菜桜助産所は、病院に行くほどじゃないけど何となく調子が悪いなど、日々のお母さんの悩みに寄り添い、お母さんが頼れる場所、いわば「ママのママ」のような存在になることを目指している。

菜桜助産所は、出産だけではなく産後ケアに注力し、産後の問題に真摯に向き合っている。堀田さんは、プロとして常に最新の知識・最高の技術で現場に臨みたいと考えた末に大学院の博士課程に進み、新たな道を発見した。堀田さんは「分娩による骨盤底筋群の損傷」に関する研究を通じ、女性は出産によって股の筋肉にダメージを受け、数年後に尿漏れ等の病気として発症することが多いことを知った。ただ、このような病気は出産後数年後に発症する傾向にあるため、今まで助産師の仕事として注目されていなかった。そこで、堀田さんは女性が生涯健康で暮らしていけるように、助産師、鍼灸師、理学療法士、作業療法士、栄養士、保育士などTeam NAOで、産後ケアに対応できるコミュニティづくりに力を入れた。
また、体操教室の開催や子育ておもちゃの開発、栄養バランスのとれた食事の宅配サービス、インスタグラム等を活用した発信(@nao.sanba)や、お母さん・子ども向けオンライン講座など様々なユニークな取り組みを行う。母となることを選択した女性が、生涯心身ともに健やかな日常を送ることが出来るように、「世話」「教育」「遊び」を3本柱として、通常の助産師の枠を超えた活動を、コミュニティづくりを通じて実現している。


菜桜助産所のインスタグラムの発信「助産師が教える性教育シリーズ」講座

やりたいことを実現・次世代に繋げるための組織づくり

目の前のことを丁寧にとことん実施し、その中で見つけたものを広げて形にしていった結果、現在菜桜助産所は80歳の方も通院いただけるような、幅広いお母さんに産後ケアを届けるコミュニティとなった。
堀田さんは、「100年でも終わらないくらい、やりたいことはいっぱいある」と語る。自分の代で終わらせずに、次の代に引き継いでいくのが次の目標。そのためには、コミュニティづくり、そして仕組みづくりが肝心。個人事業の形だと一代で終わってしまうので、会社=組織として皆で同じ目標を持って動いていきたい。働いている人が楽しく生きがいを持って働ける環境づくりが大事だと考えている。

組織として運営すると、多様な目線やアイディアが集まるというメリットがある。一人だと一方方向しか見えず同じパターンで問題が起こってしまうが、複数人いるとその人数分の目線を見ることができ、問題を未然に防ぐことができる。現在、菜桜助産所は11人のメンバーが働いていて、彼らが楽しく生きがいを持って働ける組織づくりに注力している。


力強く応援メッセージを語る堀田さん

起業家へのメッセージ「若いうちに大きく挑戦する」

最後に堀田さんから、次世代の起業家へのメッセージを頂いた。
「私がビジネスを始めた当初は、『女性だから、最初から大きなことは考えず、小さくはじめてみたらどうか』というアドバイスをいただくことが多かった。私は嫌だと思いつつ、その当時は自信がなかったので、小さくやるしかないと思っていた。
ただ創業20年後の今となっては、起業家の方には『もし新しいことを始めるのであれば、最初からどんどんリスクを取って、大きく挑戦する』ことをお勧めする。なぜなら、小さなリスクは小さなリターンしか生まないからだ。もっと最初から大きくリスクを取っていたら、その分早く達成できることをこの20年で学んだ。
もっと早く人を雇っていたら、もっと早くチームを作っていたらと、時々思う。例えば、企業当時は自分が12時間働いて人を雇うのは1時間と、必要最低限しか雇用しなかった。リスク軽減のために人を雇わないという選択肢をした結果、ビジネスの重要な戦略を考える時間や、チーム作りができなくなっていた。もし、あの時の自分に戻れるのであれば、月10万でも投資して人1人お願いし、私は空いた時間で戦略を練る形にするだろう。やりたいことを追求していくと、結局いつかは大きなリスクを取らなければならない時が来る。だから自分でブレーキをかけずに、どんどんリスクを取って挑戦してほしい。
「やりたい」と騒いでいると、そのうち1,2人助ける人が出てくる。「騒いだもの勝ち」だ。必死になってやっていると助けてくれる人が出てくるので、声を大に、挑戦していくことを大切にしてほしい。」

力強くポジティブな堀田さんのお言葉に、インタビュアーも大変勇気を頂いた。堀田さん、インタビューにご協力いただき、誠に有難うございました。