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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

クライアントのまだ見ぬ可能性、<br/>デザインで引き出します!
Interview vol.91

クライアントのまだ見ぬ可能性、
デザインで引き出します!

サーモメーター株式会社  山本加容 さん

http://www.surmometer.net/

1969年石川県生まれ。東京学芸大学卒業。雑貨好きで、有名インテリアスタイリストに憧れ「インテリアコーディネートができるかも」と不動産会社に新卒入社。その後、雑貨の販売、VMDプランナー、ファッションとフードのスタイリストに転職。グラフィックデザイナーとして雑誌の立ち上げにフリーランスで携わり、2004年8月サーモメーター設立。デザインのみならず、ブランディングなど企業をトータルクリエイトするデザインコンサルティング集団を率いる。日本全国の手仕事の器を扱う店舗も運営。日本野菜ソムリエ協会公認ベジフルビューティアドバイザー。私生活では3歳児のママ。

クライアントのまだ見ぬ可能性、デザインで引き出します!

サーモメーターのホームページを見ると、なぜだかほわっと心が緩む。一瞬で目を引く文字列や強い色味はないが、洗練されたナチュラルな空気感があり強く印象に残る。ひとことで言えばおしゃれなのにそれだけに留まらない世界観に満ちている。クライアントはファッション関係が多いのかと思いきや、意外にもお堅い企業も少なくない。「デザインにできることはまだまだある」。デザインの可能性を誰よりも信じ、追求し続ける山本さんにお話を伺った。

困ったときの駆け込み寺。ビジネスの悩みをデザインで解決

いわゆる普通のデザイン会社とサーモメーターがひと味違うのは、制作会社とクライアントを隔てる垣根がないというかやけに開放的、やたらと面倒見がいいこと。クライアントの多くは「困っているならここへ相談」と友人知人に勧められやって来る。例えば「集客の為DMを作りたい」クライアントには、話をしながら「デザインに求めるもの」を探り、本人さえ気づかなかった問題の核心を掘り起こす。“DMより実はHPに問題あり”とか“急ぐべきは店の改装”など思わぬ方向へ転がる提案もある。それは往々にして守備範囲を超え、知り合いや業者を紹介するだけの何らメリットのない仕事になることもある。
しかし山本さんにとって「人と人の間に起きる化学反応が面白い」から、むしろ相談を受けながら「抱える問題はお互い様。最善策を考えましょう」というスタンス。「困ったときの駆け込み寺でありたい」との思いが伝播するのか、営業担当はおらず営業をかけたこともない現状でも依頼は個人事務所から自治体まで引きも切らない。ペーパーデザインを手始めに企業ブランディングも行う総勢13名のデザイン集団は、趣味が高じて開いた器の店舗担当の2名以外は全員がデザイナー。山本さんの優れたコンサルティング力は社会人1年目から培った経験の賜物だった。


仕事に打ち込むほど世界が広がり、デザイン界へ進む

高校の頃から雑誌『オリーブ』を愛読し、インテリアスタイリストに憧れた山本さん。キャリアのスタートは会員制アパートという当時、画期的なシステムで業界を驚かせた不動産会社だった。時はバブル終末期。芸能人が列席する派手な入社式を終えると即、戦力として現場へ。街場の不動産屋へ飛び込み、海外リゾートの営業電話をかけ、退去者に立会い、戻れば賃貸カウンターで業務にかかるという怒涛の毎日。終電帰りも珍しくなかったが辛くはなかった。同世代の若い社員も多く、学園祭のような熱気に満ちた社内で、キャンペーンポスターの制作やイベント企画にも進んで手を挙げやりたいことをやらせてもらえた経験が外の世界に目を向けさせた。
ショーウィンドーディスプレーを手始めに転職を重ね、次第にインテリアよりデザインに興味が湧き、パソコン黎明期にグラフィック関連の仕事も開始。手書きしたイメージをデザイナーに仕上げてもらうが「伝わらない」。うまくいってもトップの判断で差し替えられることもあった。「自分がトップになろう!」。すぐさまグラフィックデザインを学んだ。方々に売り込み、雑誌の立ち上げにも参加。そして仲間と二人でサーモメーターを立ち上げたのは社会人10年目だった。

経営者であり、デザイン集団のボスとして10年

プライベートにも変化があった。3年前、女児を授かり母となった。出産前日の深夜まで働き、産後早々に復帰した。自らの経験から働きながら産むことの大変さを実感。これから結婚や出産もある20代30代の若いスタッフにも「働きやすい職場を」と保険や就業規則を見直した。子育てで「食の大事さ」にも気づかされ、野菜や果物の栄養と美容の知識を得るベジフルビューティーアドバイザーの資格を取得。経営する食器店『SML』の器と野菜の盛りつけの相性や使い方も提案していきたい。ゆくゆくは会社の近くに家族やスタッフと利用するシェアキッチンを持ちたいと考えている。
器の買い付けが縁で、昨年は鳥取の大きなPRイベントを行い、栃木では真岡市のブランディングにも関わることになった。地方の仕事が増え、全国を訪れる度に思う。「地域が活性化し日本がもっと元気になって欲しい」と。今後、できれば10年後には社長業を任せ、営業として日本中を周りたいと思っている。デザインといえば未だ「看板やチラシ、ポスター」しか思い浮かばない地方の企業にこそデザインの可能性を知って欲しいし、ビジネスを変える手助けをしたいから。サーモメーターは「なにかをやろうとしたとき真っ先に声をかけられるチームでありたいです」。