映画業界のマーケティング部門を担う!
苦難を乗り越え確固たる地位を確立
1997年東京大学法学部卒業後、警察庁入庁後、ニューヨークの大学院に通っていた2001年、9.11を経験。つらく重い空気の中、偶然見たエレクトリカルパレードに言葉にならない程感動し人々を元気にするエンタテインメント業界に進むことをあらためて決意。まずは経済、ビジネスの修業を積もうと2002年マッキンゼーアンドカンパニー日本支社にコンサルタントとして入社。2008年3月、社長として誘われGEM Partners株式会社代表に就任。現在、6人の頼れるスタッフとともに映画業界でのマーケティング部門を一手に担う。
映画業界のマーケティング部門を担う!苦難を乗り越え確固たる地位を確立
映画業界のマーケティング部門を一手に担う、GEM Partnersの梅津さん。宣伝・広告手法による映画の認知度や意欲の変化から映画の買い付けや宣伝戦略立案にまつわるリサーチデータの提供・分析を行う。設立当初の苦難を乗り超え、今では映画業界ではなくてはならない存在になりつつあるGEM。「会社のことをたくさん聞いてもらうのは占い師以外で初めて」と笑う梅津さんにお話を伺った。
憧れの映画業界で“社長”に。甘くない現実も培った経験で乗り切る
小さい頃から映画好き。いずれは「映画業界でインフラ作りや新たなビジネスモデルを作るような経営者になりたい」という思いを持っていた梅津さん。マッキンゼーに勤務しながら夜間の社会人向けの映画ビジネス大学院に通っていたある日、映画の投資関連事業を行っていた知人から「新しい会社を作るのだけど社長やらない?」と誘われる。映画業界でいきなり社長!という選択肢に迷わず飛びついたのが2008年だった。
とはいえ社長は甘くない。立ち上げ当初は投資関連事業で収入を見込みその間に新規事業を開発することがミッションだったがサブプライム問題などにより収入源が断たれた。
「とにかく売上をたてる」ため、マッキンゼーで培ったスキルを映画業界で活かすことに。映画業界はもっと戦略的に広告宣伝を行う余地があるという業界関係者の一言をヒントに、映画配給会社大手のギャガに提案を持ち込む。ここでの出会いと担当作品が運命を変えた。まずは1作試しにと「Sex and the City(SATC)」の宣伝リサーチの分析を依頼される。実は「全エピソードを15回ずつ見ていた」ほどSATCは大好き。危機的状況の中楽しんで取組んだ初めてのリサーチが評価され、その後ギャガの多くの作品プロジェクトに関与する。マッキンゼーで培った経験と不屈の精神で、事業を軌道に乗せ危機を乗り切った。
設立2年目で2度目の危機到来。借金を抱えるも唯一無二な存在に成長
ギャガとの取引実績を各社に売り込むも、ニッチな映画リサーチ業界にすでに競合は数社。だが入り込む隙があると梅津さんは読む。例えば映画業界のリサーチ対象は当時54歳までが主流。ここ10年シニア市場が拡大する中GEMは業界で初めて69歳までのデータを取る。他社と比べ蓄積されたデータが少ないのが弱みだが、「過去データは意味がない、今がクリアに分かるのがいい」と必死で営業、業績は安定した。
そんなある日2度目の危機到来。梅津さんいわく「つい調子に乗って」新規事業を始めた頃、経営危機に。梅津さんは会社の株をすべて買い取り、借金も抱えることに。2009年11月、スタッフ1人・アルバイト1人での再出発。「投資を必要とせずとにかくすぐお金になることを」と借金返済だけを考え、得意のリサーチに再度特化する。毎週定点観測でデータを分析するのは地味な仕事だが、辛抱強いスタッフがついてきてくれた。GEMの需要はどんどん広がり借金も1年で返済。予定より2年早く完済した。
創業2年は綱渡りの連続だったと梅津さん。3年目の2010年頃からは、取引先から話を聞いたという別の会社から声がかかるようになる。今では大手映画配給会社のほとんどが顧客に。時には、映画買付けにあたってのマーケティング分析を行うなどサービスの幅も広がっている。
業界人の雑談から新サービス!映画業界のお天気予報的コラム
GEMの代名詞ともなっているコラム、映画業界関係者が毎週読んでいるメールマガジンがある。映画業界関係者では挨拶代り・お天気のように「今週末の映画、どれくらいいくかな?」と会話がなされている。そんな雑談をヒントに、GEMの認知度を上げる試みでスタートしたコラムは、業界の実情をデータとともに客観的分析を惜しみなく“無料”で2010年から発信している。
例えば2011年の映画興行収入が前年比10%減になったこと。「震災の自粛ムードのため」と業界では思われがちだった。データを見ると震災直後は確かに落ち込んだが、夏前まで興行収入は変わりなし。夏にヒット作がなかったことやもっと前から続く構造的な変化が大きな要因と梅津さんは分析した。
データをふんだんに活用したコラムは大きな評判を生み、多くの映画関係者の間でメールマガジンは転送されるようになる。実は大手映画会社のトップまで読んでいたり、映画のパブリシティ会社ではGEMのコラムを参考にした勉強会も開かれている。コラムをみてGEMを知ったという人から相談を受けるきっかけにもなっており無料コラムの効果を実感している。
また現在は、東京国際映画祭のシンポジウムゲストに呼ばれることも。データをもとに業界を語る梅津さん、だいぶ業界の中で認知度が上がってきた。
目指すは映画業界の日経平均。エンタメ業界を活性化
業界内で多くの大手配給・興行会社を取引先に持つようになった今。今後の目標は、「映画業界の日経平均になること。より効率的にスピーディーに映画ビジネスが展開することに貢献するツール・インフラとなりたい」と語る。GEMが提供するデータや資料がより広く・深く浸透し映画ビジネス事業者が判断する際の「共通言語」になることを目指す。
そして新事業もあらためて模索中。ゆくゆくは制作サイドとファンの相乗効果を図るファンサイトや、データに基づいた中立性のある業界紙を作りたいなどアイデアを温め練っている。
映画業界に入ってはや5年。客観的に業界をみることを意識している。業界内の人やスタッフたちに刺激を与え、新しい風を吹き込み続けられる存在でありたい。
“GEM”はGlobal Entertainment Marketingの略で、gemは英語で「宝石」という意味のほかに「秀逸なもの」「逸材」という意味がある。GEM Partnersは映画ビジネスにとってそんな存在を目指したい。コンセプトは映画プロデューサー・クリエーター「1人の勘を、みなのアクションに」。客観的なデータを多く用いることで、映画ビジネスコミュニケーションが円滑になり、エンターテイメントが多くの人に行き渡るように。映画を見た多くの人々に感動と幸せをもたらす活動に、大注目だ。