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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

旅のカウンセリングを<br/>ビジネスとして確立した第一人者
Interview vol.57

旅のカウンセリングを
ビジネスとして確立した第一人者

チェルカトラベル株式会社 井上ゆき子さん

http://www.cerca-travel.co.jp/

旅行の専門学校卒業後、1989年、大手旅行社の情報誌部門に入社。1年後、別会社の国際航空券発券課に入社。1993年、結婚と第一子出産を機に退社。子どもが一歳になる直前、依頼があり復職。その後、ハネムーン、学術渡航、企業出張手配など様々な種類の旅行業社に移籍し、最後に在籍した会社では課長職として営業リーダーを務める。在職中、京おんな塾で起業を学び卒業後半年の2006年、37歳でチェルカトラベルを設立。

旅のカウンセリングをビジネスとして確立した第一人者である井上さん

19年にわたる旅行業界での経験を経て、女性の為の旅コンサルティング会社を設立した井上さん。第一人者として旅のカウンセリング事業を開拓していった経緯、小規模な会社には厳しい条件である旅行業の再登録が今年に迫るなかでの奮闘、ビジネス目線での経営判断と自分のやりたいことの兼ね合いなどたくさんのお話を伺った。

イメージ先行型の女性の旅に感じたビジネスの可能性

ヘッドハンティングが多い旅行業界。井上さんも多数の会社から引き合いがあった。新婚旅行、学術渡航などそれぞれ得意分野を持つ会社を経験したことで、知識もつき自分がフィットする分野を見つけることもできた。19年にわたる旅行業界での経験を経て、2006年、女性の為の旅コンサルティング会社、チェルカトラベルを設立する。
業界でも非常にハイレベルな知識を要求される質の高い旅行会社にヘッドハンティングされ4年半。井上さんは課長職についていた。しかし、会社の方針を部下に強要するのではなく、井上さん自身の考えをビジネスに直接反映出来るような、もっと広い意味で影響力を与えたいと思った。また、自分自身、海外と直に携わっていたいという思いも消えなかった。
在職中に女性起業家を支援する京都市の事業「京おんな塾」に3ヶ月通う。起業したいというよりもどんなものかという興味からだったが、いい先生と出会い、発破をかけられ起業を決意。スイッチが入ると早い性格のため迷いは無かった。男性が目的を持って旅をするのに対し、女性は「こんな感じの旅をしたい」というイメージや想いが先行する。我儘もたくさんありパックツアーでは対応しきれないことも多い。女性の旅に対する憧れを実現させたいという想いとともに、女性向けオーダーメイドの旅行サービスにビジネスの可能性を感じた。

ビジネスとして成立するという概念の無かった『旅のカウンセリング』を事業に

井上さんは旅のカウンセリング事業の第一人者だ。独立当時、「旅のカウンセリング」が独立したビジネスとして成り立つという概念がなかったため、ゼロからの出発だった。しかし「相談料」という形でコンサルティングの業法は存在しており、そのサービスの根源を掘り起こして発信していきたいと思った。カウンセリング料も一般的には存在していなかったため一時間3000円(当時)と受け入れやすい金額を設定した。現在、カウンセリングを事業として行うのは全国で2社、主事業にしているのはチェルカトラベルのみだ。
独立後、自分の楽しみを共感してもらいたいとブログに旅行の様子をアップし始めた。それを見た読者から「これと同じプランで旅行したい」という依頼を受ける。そして、新婚旅行や社員旅行などにリピート、口コミでも広まっていった。こうした地道な努力が実り、顧客は5年で200人にも膨らんだ。一人あたり7~10日間の旅行分の膨大な情報量。社員は井上さんの他に営業、コーディネートを行うスタッフが1名。顧客は月に10名が限界だ。ビジネスとして成立させるには仕事の範囲を見極めることも重要になる。井上さんが手配全般を担当するが最近はセミナーや講演依頼が入ることも多く、新規顧客の問合せはストップせざるを得ない状況だ。手配を担当するスタッフを増やしていきたいと思っているが、会社規模の拡大は考えていない。

最低純資産300万円以上が登録条件。5年単位の旅行業登録に挑む

起業して5年。今が1番大変だ。旅行業の登録有効期限は5年、ちょうど今年で切れる。現在、再登録に向け調整中だが、第3種旅行業の登録は300万円以上の純資産を出すことが条件。小規模の会社には厳しい、不条理な条件だと思う。旅行業は薄利な仕事なのでよほど大きな仕事が入ってこないと難しい。それが同業種の会社がむやみに増えない理由でもある。クレジット決済を採用するチェルカトラベルはキャッシュフローの面でも厳しい。
旅行業界が薄利なものであるという認識も最初からあった。いかに手間をかけずに数で勝負するか、もしくは高利なものの取り扱いを重視するか。現在、チェルカトラベルはその中間にある。ビジネスとして成立することを意識しながらも一人旅の女性がお金をかけず気軽に楽しむことのできるよう、顧客の目線で「自分が楽しめる」旅をコーディネートしたい。
2007年に京都を旅する女性のための会員制旅行ブランド「京ちぇるか」を立ち上げた。全国の顧客の要望を受け軽い気持ちで始めたが、思った以上に需要がありビジネス目線でいうといい事業だった。しかし、井上さんが元々やりたかった「日本女性を海外に」というコンセプトとは異なるため、会社のメイン事業にしたくはなく、現在はほぼクローズ状態だ。

「旅」というキーワードをもとにあらゆる面からサポートしたい

井上さんは今も月に1度の旅行は欠かさない。仕事で行くこともあれば、視察のために行くこともある。セミナーやワークショップを開催する機会も増えた。セミナー事業は複数の方を一度にカウンセリングするようなことだと思う。「旅」というキーワードをもとにあらゆる面から女性をサポートしたい。最近開催したのは「ちょっと贅沢な旅をする為のワークショップ」と題して、豪華客船のスライドを流したり専門業者の方に今まで聞く機会の無かった話をしてもらった。他には井上さん自身が気に入ったホテルを紹介するセミナー、出発前の体調管理についてのセミナーなどを開催。体調を整えるためのプチ断食では権威の先生を呼んで講演してもらった。女性一人の宿泊にあたって臭いが気になる、気持ち悪いなどと感じたときのために気持ちを浄化させるためのフラワーエッセンス、ファスティングをテーマにしたものも。食事付きで一人一万円、高級ホテルでのワークショップは40名の参加者に喜んで頂いた。
将来の夢として考えていたことが今、現実になりつつある。電子図書の出版と旅講座の開催だ。もともと文章で伝えることが好きで、本の出版を考えていたところオファーがあった。旅の楽しさを伝えたい。旅講座は、パック旅行とは違い、自分で旅を作るための講座。旅の臨場感を伝えながらレクチャーしたいと思う。

(インタビュー&ライティング 杉田屋 まりえ)