fbpx

女性社長.net

  • メール
  • facebook
  • twitter
  • Ameba

限定情報をメルマガで定期入手!

女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

J300メインビジュアルを手がけてくれた<br/>山本晶子さん
Interview vol.51

J300メインビジュアルを手がけてくれた
山本晶子さん

Dogs,Inc 山本 晶子さん

http://www.dogs-inc.co.jp/

女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒業後、広告制作会社㈱ノバ・グラフィックを経て1997年(有)ドッグスを設立。2010年、配偶者である五十嵐たかしさんが代表を務める(有)五十番と合併。パワーアップをし、より幅広い仕事に意欲を見せる。 三菱レイヨンの仕事では、雑誌広告(消費者のためになった広告「優秀賞」90年、91年)新聞広告、繊研流通広告賞「第2部門・金賞」94年など受賞。他にも丸美屋、クレディセゾンなど多くの大手企業の実績あり

J300メインビジュアルを手がけてくれた山本晶子さん

今年のJ300メインビジュアルを担当してくれた山本さんにお話を伺った。通常のデザイン制作でも第1稿をあげるのは早く時間を置いて見直し手を加えていくが、今回は〆切直前に応募を決めたこともあり1時間ほどで形にしたとのこと。短時間でも完成度の高いデザインをつくりあげる山本さんのアートディレクターという仕事、今後挑戦してみたいことについてお話を伺った。

水と油でいいドレッシングを作りたい

山本さんは広告制作会社に勤続後、1997年30代で(有)ドッグスを設立。バブル期を経て仕事の幅も広く多く達成感もあり独立する必要性を感じていなかったが、会社の仕事が減ってきたことに加え指名を受ける顧客が増えてきたこと、周囲から背中を押されたこともあり独立を決めた。独立当初は会社所属時の顧客からの依頼が多かったがそれだけでは仕事が続かず自分からアピールし仕事を獲得していくことも増えていった。
山本さんの独立時、既にご主人は同業の仕事で独立していたが、どちらも一緒に働くことは考えず、山本さんは別会社を設立。そして独立から14年後となる半年前、ご主人の会社(有)五十番と合併した。協力することで仕事の幅を広げもっといろいろなことができるのでは、という思いからだ。「水と油のように質は異なるけれど、それがうまく混ざりあっていいドレッシングを作ることができたら」と山本さん。今は、個別に仕事をこなしている状況で合作したことはないが、今後協力して作品を作り出したいと考えている。お互いの仕事にあまり口は出さず、デザインについて意見対立したことはない。共感し、リスペクトしあう関係だからこそ一緒に仕事をしていくことができる。現在、感じている合併したことによる変化は男女比のバランスの取れた構成で仕事に取り組むことができるという利点のみだ。

グラフィックデザインからブランディングまで~アートディレクターの仕事~

山本さんはデザイン業にとどまらず、商品企画、開発、ブランディングなど幅広い仕事を行う。アパレルとの仕事では、写真撮影に立ち会うだけではなくキャスティングのオーディション、カメラマンまで決めるのがアートディレクターの仕事だ。
1997年の設立当初は会社説明のパンフレットや商品ポスターなどを手がけることが多かったが、近年ブランディングの仕事を受けるようになった。現在は、イメージを一新したいという会津の造り酒屋の商品を瓶のラベルからパッケージ、封筒などのデザインを一括して請負い、考案中だ。最初のプレゼンまで一ヶ月。20パターンあるラベルは、統一感を持たせつつそれぞれの酒の特徴をイメージさせるデザインにした。全ての瓶につけている利き酒用のおちょこの底をかたどったタグがとても素敵だった。
独立して1番大変だったのは、やはり仕事がなくなった時。3、4ヶ月仕事がないこともあった。対処法は「与えられた空白だと思って忙しくてできなかったことに手をつけるなど、リニューアルの気持ちで臨む」と語る山本さんは、どこまでもプラス思考だ。


消費者層に応じたデザイナー選び。性別を越えたデザインの機会を

デザインに関する男女の違いは、フォントなどではなく色使いに表れると山本さんは話す。幼児向けの商品、文房具なども女の子向けのものの方がバリエーションも多くたくさんの色から選ぶことができるように、女性の方が幼少の頃から多様な色に触れる機会が多い。その経験がデザインをするうえで影響し、女性デザイナーの色使いは鮮やかだと山本さんは感じている。近年は多様な色のランドセルが販売されているが、色のセンスを磨くにはいい傾向だ。有能な男性デザイナーは女性目線でデザインをすることもでき、性別を越えていい競合相手となっている。
広告においてはコンセプトの立て方にも性別による違いがあり、企業も消費者層に応じてデザイナーを選ぶ。お得意さまである三菱鉛筆から初めて依頼を受けた時は、女性や子供が使う文房具は女性デザイナーでという観点でドッグスが起用されたが、今はドッグスならではのお洒落感、クオリティの高さを評価され依頼が続いている。鉛筆「ユニ」誕生50周年に限定発売された240色の色鉛筆のポスターはグラデーションがとてもきれいだ。240色は人間が識別できる限界だという。
逆に車のデザインを女性デザイナーが受注する機会は圧倒的に少ない。山本さんには「女性から見たかっこいい車を作りたい!」という熱い想いがある。女性をターゲットにした商品は軽自動車が中心となっているが、スタイリッシュな普通車を乗りこなしたい女性はたくさんいる。女性目線でのかっこいい車は、女性だけでなく男性にもウケるかもしれない。車会社は普通車のデザインに女性を幅広く活用してみてはどうか。


自分が欲しいものを形にしてくれる仕事をしたい

「私達の仕事は利益を生み出すために商品イメージを高めるためのもの。でもそのデザインはクールやドライになり過ぎないほっとするもの、チャーミングでユニークなものにしたい」と山本さん。デザインで大切にしたいことは「お互いが気持ちよくなれるもの」だと言う。こうした感覚はやはり女性ならではかもしれない。
今後は、その組織のイメージに大きく影響するブランディングにもっと挑戦していきたいと話す。例えば、保育園や歯医者、商店のブランディングなど。保育園の制服や給食の食器など全て統一したかわいいものにし、スタイリッシュな保育園をつくりたい。ちょっとお洒落な歯医者さんも興味がある。相手の望む場所を作っていきたい。 また、商品のデザインにも挑戦したい。携帯にしろ家電にしろ自分が欲しいと思うものを形にしてくれるところと組み仕事をするのが一番の希望だと山本さんは言う。その興味は幅広く、意欲は旺盛。そして無限に広がる可能性。
自分が欲しいと思うものが形になるなんてとても感動的なことだろう。山本さんには、携帯、家電、車などこれから挑戦してみたいもののたくさんの引き出しがある。企業が山本さんのデザイン、目指す方向性に共感し、山本さんのアイデアがその引き出しから商品として少しずつ形になっていくのが楽しみだ。

(インタビュー&ライティング 杉田屋 まりえ)