fbpx

女性社長.net

  • メール
  • facebook
  • twitter
  • Ameba

限定情報をメルマガで定期入手!

女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

理想の学校づくりに奮闘する<br/>小林さんと仲間たち(後編)
Interview vol.50(後編)  

理想の学校づくりに奮闘する
小林さんと仲間たち(後編)

軽井沢インターナショナルスクール設立準備財団 代表理事 小林 りんさん

http://isak.jp/isak/

高校1年の時、自分の力を試すため中退し、カナダの全寮制高校に留学。そこで、日本の暗記型学習とは全く異なる授業形態、試験を経験。1998年に東京大学経済学部を卒業、モルガン・スタンレー投資銀行部門やベンチャー企業経営などを経て、2003年夏に政府系援助機関へ転職。2005年に米スタンフォード大学国際教育政策修士号を取得。2006年夏には国連機関で働くべくマニラへ単身赴任し、2008年8月に帰国。国際協力銀行で円借款業務を担当、その後、国連児童基金にてフィリピンで貧困層の非公式教育に携わる。2009年4月より現職。

理想の学校づくりに奮闘する小林さんと仲間たち(後編)

前編では小林さんが教育を通じた国際協力を志すに至った経緯に触れた。 後編は全寮制の軽井沢インターナショナルスクールのカリキュラムなどに詳しく触れる。小林さんたちが目指す理想の学校とは。地震でサマーキャンプ〆切の延長、資金繰りなど影響が出ているが、小林さんはどんな困難にも屈せず2013年の開校に向け尽力する。

100人が100通りのリーダーシップを

リーダー像は実に多様だ。戦後の日本でアメリカのGHQ最高司令官として強い指導力を持ち教育制度や女性への選挙権の付与など日本人の価値観を大きく変えたマッカーサーと、宗派を問わず全世界規模で貧しい人々のために活躍しノーベル平和賞を受賞したマザーテレサが全く異なるタイプであるように、100人いれば100通りのリーダーシップがある。リーダーシップの開発は、まずは自分のスタイルを知り強みを発見することから始まる。
リーダーシッププログラムは座学1割、復習2割に対し、実践7割をイメージしている。この実践を行うのに、全寮制がキーになる。サマーキャンプでは、「参加者とのコミュニケーションを大切にする」といった大まかな規則(グラウンドルール)だけを決め、「インターネットの使用時間を1日何分にする」というような細かいルールは子供達で意見を出し合いながら決めてもらう予定だ。ルールを決める過程では異なる意見の中でコンセンサスをとることを学び、実際の運用の中では想定外の課題に対応する能力を養う―それこそが社会で必要となる力だ。去年はマッキンゼーのCEOであったエアン・ショー氏が講演に訪れたが、今年は誰に講演してもらいたいかなども自分達で考えてもらい交渉まで任せたいと考えている。事前準備から取り組んでもらうために、今年は募集日程を早めた。
いろいろな壁を越えながら、子供達には「これだけは負けない」という自分の強みを発見し自信を持ってもらう。この自信が社会に出た際、パッションを持ったリーダーに不可欠となる。日本の学校では苦手分野に焦点が当てられるが、中学、高校という重要な時期に自分の得意分野を伸ばすことは非常に重要であると小林さんは話す。1人1人の生徒をちゃんとみることのできる距離感が大切なので、各学年50名程度、1クラス10~18名の少人数教育を行う。

文系、理系、アートなど領域を越えた思考、デザイン力を養う

学校がユニークであるポイントの一つであるデザイン力とは、社会において自ら問題提起し、各専門分野にとらわれず複合的に問題の解決に取り組む能力である。文系、理系、アートなど専門分野の線引きしたうえでの役割分担ではなく、領域を超えた思考を養う。例えば、商品開発などにおいても、アップル社の新商品を企画開発するには、理系の知識とアートのセンス両方が必要になる。社会で活躍するのは、このようにたくさんの引き出しを持った人材だ。大企業神話が崩れる中、問題意識を持ち次に起こる事態を察知する嗅覚、センスを磨くことも重要になる。
参考にするスタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所では、デザイン力を身につけることで、身の回りの問題を特定しそれを解決するための対策を考え出し、実践に移すプロセスを生徒達に教えている。例えば電車に乗り、各自で問題点を探し出す。吊革が高く子供がつかめないのであれば、低い位置に設置する。つかみやすいように吊革の形を変えても良い。これはプロダクトデザイン、電車の遅れに関する問題はソリューションデザインといったように、一つの授業で複数の分野の領域にまたがった学習が可能になる。

これからはアジアの時代。ヨーロッパ人も注目するアジアらしさ、日本らしさ

どこか欧米至上主義になっている世界。そのなかでアジアらしさ、日本らしさを重視する。授業は英語で行われるが、日本の素晴らしい文学や社会に関する教育にも力を入れる。茶道や華道といったわかりやすい日本文化だけではなく、外国から評価を受ける礼節の心、列にちゃんと並ぶなどの日本人の習性、価値観を日常的に身につけてもらう。これからはアジアの時代だと思っているヨーロッパ人も多く、今年のサマーキャンプでは、どうやって知ったのか、チェコやアメリカ、ケニヤからも応募や問い合わせが入っている。
対象を高校にしたのは(中学校も設立予定)、大学や学部を選択するにあたって、幼稚園から小学校で確立させたアイディンティティを見つめ直し、目標を決める重要な時期だからだ。軽井沢インターナショナルスクールでは、日本をはじめ世界100カ国 2000校以上の大学への出願、もしくは入学資格として認められている「国際バカロレアディプロマ」を軸にする。可能な限り門戸を開いておきたいからだ。

全てのことに理由がある。困難に屈しない小林さんの力強さ

軽井沢インターナショナルスクールの卒業生がアジアの未来を担っていく人材になるのが今から楽しみだが、小林さんは学校のミッションとして最も重要なのは、子供達にどのようなことを提供できるかにあると語る。社会的インパクトはその次だ。 これから2013年の開校に向け、資金調達、口コミで周知を図ることなどを行う。オピニオンリーダーとしての保護者の意見もとても重要だ。アジアや日本の優秀な教師の協力も仰ぎたいと考えている。
サマーキャンプの体験は学校を知ってもらうのにとてもいい機会である。今年のサマーキャンプは7月18日~30日に行われ、対象は中学2年生から高校1年生。3月末までの締切としていたが、地震の影響で4月20日までに延長した。