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女性社長インタビュー

業歴5年以上の方をメインに、会社員時代のキャリアや独自のアイデアを活かしているスタートアップの方まで。
企業の裏話や事業継続の秘訣などを伺っています。

「授乳服のモーハウス」<br/>「子連れ出勤のモーハウス」<br/>同じ女性経営者として、お話を伺いました
Interview vol.46【前編】

「授乳服のモーハウス」
「子連れ出勤のモーハウス」
同じ女性経営者として、お話を伺いました

有限会社モーハウス 光畑由佳さん

http://mo-house.net/

倉敷市生まれ。お茶の水女子大学被服学科を卒業後、パルコで美術企画を担当。その後、建築関係の出版社を経て、自身の出産・育児体験を基に、授乳服」の製作を開始。おっぱいライフを快適にする授乳服を通じて、女性が自分らしいライフスタイルを楽しめることを支援する「モーハウス」を設立。製品だけでなく、自身と従業員の「子連れ出勤」という就業スタイルが注目を集めている。著書に「働くママが日本を救う!「子連れ出勤」という就業スタイル」がある。

「授乳服のモーハウス」、「子連れ出勤のモーハウス」の光畑さんに、同じ女性経営者として、お話を伺いました

元々つくばに住んでおられた光畑さん。つくばエクスプレスが開通する前、自営業を営む旦那様との結婚後、自宅で何ができるだろうかと小さな資金で色々なことを始めたのだそうです。建築のコーディネートから在宅で育児雑誌の編集の仕事まで。様々な働き方を体験しながら、「やりたいこと」そして「働きやすさ」を求めて模索していった結果、一番光畑さんにぴったりだったのが自分の育児体験でのハプニングから女性のライフスタイルを変革したいとして立ち上げたモーハウスでした。目標としていた売上を達成し、「主婦の片手間」の域を超えた頃、法人化。その後、東京青山、百貨店にも店舗を出すようになったモーハウスがこれまで体験してきた転機についてじっくりとお話を伺いました。

地方都市で事業を始めるということ。

メリットとしてはまず固定費が都心と比べて低いこと。なんといっても家賃が安い。つくばの自宅で始めたものが大きくなるにつれ倉庫やオフィスが必要になったが、それぞれ数千円から数万円という格安の家賃で済んだそうだ。(ただし、これはつくばの中でもかなり安い部類である。)反対にデメリットとしてはフットワークの軽さが期待できないこと。電車が通る以前はどうしても必要な場合のみ、大体2ヶ月に1回程度の頻度で東京まで足を運ぶ生活。事業展開のスピードはどうしても遅くなってしまう。それでも、都内よりはつくばのような「東京近郊で土地が安くて、お母さんが多い土地」は有利だと光畑さんは語る。
都市部で電車通勤生活を強いられる母親たちのために自宅を開放したサロンでの販売や通信販売で仕事を続ける中、転機が訪れた。つくばエクスプレスの開通だ。「これで東京の人がつくばに来てくれやすくなる。」そんな風に考えるくらい都内に進出する気はなかったが、社内ワークショップの中で従業員の希望として以前から東京へ進出することは上げられていた。それでは将来の勉強のために、と不動産巡りを初めて間もなく出会ったのが、現在モーハウス青山ショップとなっている物件だった。表参道駅から、渋谷方面に歩いて3分。広場に面した路面店という好条件。値段は予算の数倍した。迷った末、手を挙げたときには二番手だった。光畑さんは結果を運命に委ねた。

「おもしろそう」というワクワク感。

予算の数倍の物件に手を出すという大きな決断。決断の背景は一言でいうと「面白そうだった」ということ。「青山通りに匹敵する場所といったら、他にはショッピングセンターくらいしかないと思ったんです。でもショッピングセンターの中はエスカレーターのように子どもに対して危険なものもある。ライブハウスのマネージメント経験のあるスタッフの見立てで、なんとか賃貸料は払えそうだということは分かった。つくばでさえ、サロンには様々な業種の人が集まってくるのだから、東京ならきっともっと面白いと思ったんです。東京都ウィメンズプラザ、こどもの城、国連大学、青山学院大学が近接するこの場所なら、色々な人に子連れ出勤を見てもらうこともできる。色んな人のワクワク感のために数倍払ってみようか、と決めたんです。」光畑さんの予想はその後、見事的中することになる。

常に根底にあるのは「女性のライフデザイン」

商店を営む両親の元で育ち、お茶の水女子大学を卒業後はパルコに男女雇用機会均等法一期生として就職した光畑さん。「どうすれば仕事をつづけられるか」ということは自分が過ごしてきた環境からはごく自然に出てくる疑問だったという。一期生として、取材を受けたこともあった。また、パルコでは法律が変わる以前から総合職で女性の採用を10年以上行なっていたため、子どもができても仕事を続けることは「この道を築いてくれた先輩たちに対しての責任」でもあった。働き続けることが普通の環境でずっと過ごしてきた光畑さんにとって、自分や働きたいと願う女性が働きやすくなるようサービスや就業制度をつくることは自然の流れだったのかもしれない。
モーハウスの授乳服も、子連れ出勤という就業スタイルも、根底にあるのは「お母さんのライフスタイルの発信」である。本当に売りたいのは服だけではなく、授乳服によって得られる開放感であったり、赤ちゃんと一緒に好きなことができるという喜びなのだ。商品の販売から、授乳ショー等の快適お産おっぱいライフイベントの企画運営、本の執筆と光畑さんの仕事は多岐に渡る。「なんでもありに見えますけど、全部一つのやりたいことのためのツールなんです。だから、私たちはそういう提案があっても子ども服や子ども向けのおもちゃはつくっていません。だってお母さんのライフスタイルが根底にないから。」実際、授乳服を体験した母親たちはその後もう一人産むケースが飛躍的に多くなるという。「授乳を出産によって課される義務じゃなくて、トイレに行くくらい自然なことにしてしまうんです。生活の中の小さなストレスの積み重ねを取り除くだけで全然違います。子どもがいても社会と繋がれるんです。」


創業10年を迎えたモーハウス。今後は?

10年間で授乳服はかなり広がってきた。今後しばらくは積極的に店舗を増やすというよりは現状を維持してより質の良いものを追求していく恰好になる予定だそうだ。小さな会社がパイオニアとして先を走っていても、大手がすぐに真似をしてくる。数では勝てない中、生き残るには、どんどん新しいものを出すか、自社商品が優れているというエビデンスを出すか、コンセプトで勝つか。モーハウスによる女性のライフスタイルの発信は、今また新たな段階にきている。「授乳中のお母さんに優しいもの」は、「万人に優しいもの」の開発につながる。体を包み込む心地よさは母親達だけでなく、乳がんに悩む女性などにもひそかに支持されているそうだ。現在、ユニバーサルデザインのブラなどインナーウェア開発に向けて共同研究が行なわれている。光畑さんの思いはゆっくりと、確実に、広まっている。

(インタビュー/ライティング:鶴薗 美穂)