編集記事2009.09.24 (木)
「女性社長.net」突撃取材 Vol.13
途上国発のブランド直営店「マザーハウス」
<PROFILE>
株式会社マザーハウス
代表
山口絵理子
1981年埼玉生まれ。
ワシントン国際機関でのインターンを経てバングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程入学。
現地での2年間の滞在中日本大手商社のダッカ事務所にて研修生を勤めながら夜間の大学院に通う。
2年後、帰国しビジネスを通じた国際貢献を実践すべく株式会社マザーハウスを設立。
たった11坪の店舗にも、
ふんだんに盛り込まれたマザーハウスストーリー
J300でも、熱く語りかける姿が参加者の皆さんにも大いなる刺激となったひとり。
「夢を持てる人間は限られている。その幸せを感じる」と話すマザーハウスの山口絵理子さん。
そんなマザーハウスの山口さんを始めとしたメンバーたちが一緒に紡ぐ想いやストーリーを、どう店舗作りやWEBで表現しているのか、そのこだわりを取材した。
今回、設立2年目にOPENした入谷の一号店にお邪魔した。入谷駅から約5分。 路地を入ったところにポツンとナチュラルだが存在感をもってたたずむマザーハウス。 表参道でも青山でもなく、入谷という街を選んだ決め手は「街の人の温かさ」。物件選びの際、街の方がカバンを買ってくださりその温かさに「入谷を元気にしたい」と決めた、記念すべき一号店だ。 もと倉庫として使われていた場所を、マザーハウスの店舗として生まれ変わらせたのは「店舗も手作りで」のこだわり。4店舗を国内で展開するマザーハウスは、今も手作りにこだわっている。近々、大阪にも直営店を南船場にOPENするそう。スタッフ同士で「また筋肉痛週間だね」が合言葉だ。
店舗のこだわりポイント 1
マザーハウス内のマザーハウスは近況が知れる
店舗内にある、「マザーハウス」。店舗の中に家がある。もともと「マザーテレサのように愛がある、そして子供たちが安心をして住める家を提供したい」という想いから社名がつけられた。その象徴であるハウスが店舗内にある。
ハウス内には、バングラデシュのサイクロン被災地の写真。バングラデシュでマザーハウスの社員たちが緊急物資の提供をした様子が写真と文章で飾られている。写真は決まってはいないが2-3ヶ月に一度程度入れ替えるそうだ。前回は、バングラデシュ現地のスタッフ13名の紹介も。そして山口さんの想いを語った記事、マザーハウス設立のきっかけとなった素材である、バングラデシュ特産のジュートも飾られている。ハウスの中には椅子があり、お客様がゆっくりと資料を見たり商品のストーリーを知り空想する場所となっているのだ。
店舗のこだわりポイント 2
コンセプトがはっきりした店舗づくり
マザーハウスのコンセプトは「強さと優しさ」。そして入谷店では「大人の公園」を想像して店舗は作られている。什器(商品棚)にもその遊び心と信念が表現されている。
例えば、強さは、「鉄」とピンポイントカラーの「赤」で。優しさは「木」が使われている。全体的にはナチュラルで気持がよい空間だが、どこか芯を感じる。鉄の什器は実は収納にもなっており使い勝手も重視しながらコンセプトを貫けるのはやはり手作りならではだ。
入谷店のコンセプトは「大人の公園」。木の棚は、ロープでつながっておりブランコをイメージしている。各所にこだわりが見られ、まさに大人が何度も遊びに来たくなる場所。
店舗のこだわりポイント 3
ソーシャルポイントカード
ポイントカードもソーシャル…。スタンプがたまったら1500円分の商品券として使えるほか、1000円分が社会貢献活動に使われる仕組みとなっている。マザーハウスは世界最貧国バングラデシュで生産された商品を、人件費が安いから「安く」ではなく、質の高い商品を適正価格で販売している。社会起業家という名前に恥じず、ポイントカードにも哲学があるのだ。ポイントカードにも意識して「Social Point Card」と記されている。記入する側も、マザーハウスの商品を買えば社会活動に参加している気分になれる。会社のコンセプトが随所に表現されている。
商品のストーリー性はもとより、店舗、システムとふんだんにマザーハウスストーリーが散りばめられ、こだわりが伝わってくる。 そして、店舗スタッフも「ストーリーテラー」と呼ばれている。スタッフ一人一人が代弁者なのだ。お店の心地よさと毎回訪れる楽しみを提供してくれる店内のマザーハウスが顧客のリピート率を高めている。
店舗のこだわりポイント 4
会社ホームページにもこだわりを。
3月にリニューアルした会社ホームページにも情報がふんだんに詰まっている。まさにマザーハウスストーリーの宝庫だ。今回のリニューアルでは、代表山口さんや経営メンバーのブログへトップページからバナーでリンクが張られている。そしてブログには、トラブルのこともあからさまに書かれており、現地の通信環境の関係で更新頻度は高くないこともあるが、コメント数が平均50を超えている。「マイナス面を出すのはリスクもあるが、皆さんと一緒に商品を育てている感覚を持ってもらえる」そんなよさをブログで表現している。そして、帰国している際は、山口さんが店舗に立つ日が伝えられお店が一層混むそうだ。WEBショッピングももちろん展開しているが、それでも遠方から足を運ぶお客様がいる。
会社、商品、店舗、WEBに一貫した信念がいきわたっている。だからこそ、ファンがつく。マザーハウスの「強さとやさしさ」。が伝わってくる取材となった。